第45回 いぬ年の示唆

 

お正月の雰囲気を圧倒的に盛り上げる鏡餅の力  撮影 三和正明

お正月の雰囲気を圧倒的に盛り上げる鏡餅の力  撮影 三和正明

 

 皆さま、新年明けましておめでとうございます。本年もポジティブジャパンがお届けするメールマガジンをご愛読下さいますよう、宜しくお願い申し上げます。

 さて、今年は「いぬ(戌・犬)年」。果たして干支の犬が今年一年に込めようとしている示唆とは、一体どのようなものなのでしょうか。そのヒントを「いぬ(犬)」という動物の特徴・特性を理解することで手繰り寄せてみようと思います。

 まず、犬は、何と言っても飼い主に対して忠実で、決して裏切るようなことは致しません。その忠誠心、服従心は、他の多くのペット達とは比較にならないほどに強靭で、しかも一旦この人と決めたら、虐待のようなことがない限り、その人への忠誠心や服従心を変えることはありません。もともと狼が人に飼いならされて今日の犬になったと言われていることからも、群れのリーダーに対する忠誠心・服従心には絶対的なものがあり、そのDNAを不変・不滅のものとして今日まで継承してきた筋金入りの動物が犬なのです。

 このため、渋谷駅頭の「忠犬ハチ公」のご主人思いの忠誠心や、南極にとり残されたタロー・ジローの樺太犬の屈託のない服従心に類する逸話は、人と犬との麗しい関係を象徴する話として、今も私たちの心を打つのです。

 が、犬たちは言います。この犬たちの持つ特性を鵜のみにして真似るようなことはしてはなりませんぞ、と。

 それは何故でしょう。犬たちは、それを自分の鳴き声で主張します。
「私たちの生き方や考え方が美しいと言われることは有難いことですが、冷静にみれば、私たち犬の行動特性は、常に『ワン・ウェイ』、『ワン・パターン』、『ワン・タイム』、『ワン・チャンス』の一方通行型アクションであって、そこには哀しくも切ない『思考停止』の危険が潜んでいるのです」と。

 更に犬たちは言います。
「私たちが示唆しようとしているのは、美しい関係を構築するために私たちが『従』となり、相対する相手を『主』とする組み合わせに潜む危険性に人類は気付かなければいけませんよ、ということなのです」と。

 犬たちは言いたいのです。「私たちの忠誠心溢れる行動が美しいと称えられる一方で、『幕府の犬』『犬侍』などという言い方で蔑まれる事実を放置していては、私たちは『犬死に』するしかありません。私たちが美しい存在でいられるのはそのご主人の生き方が見事な場合だけであって、ご主人が時代錯誤的な生き方をされた場合には、私たちは『名犬』から『迷犬』になり下がってしまうのです。そして正にこの点に私たちが示唆したい部分があるのです」と。

 犬たちが主張したいこととは、相手のありよう次第で自分たちのポジショニングが変わるような非主体的な生き方、すなわち「ワン・ウェイ」「ワン・パターン」的な生き方ではなく、多彩な視点や多面的な判断力を駆使して自らをベストポジションに持って行こうとする主体的で自律的な「マルチ・ウェイ」「マルチ・パターン」的生き方を志向することによって、「ワン・タイム、ワン・チャンス」を「マルチ・タイム、マルチ・チャンス」に改変していくべし、ということであり、それこそが「いぬ年の示唆」だということなのです。「ワン」から「マルチ」への進化 ― 正にこれこそが、いぬ年が示唆する結論なのです。

 と、一匹の犬がいきなりしゃしゃり出てきました。その犬は胸を張って言います。
「これまで色々な犬種がブームになっては消えていったが、ついに我が犬種のブームが到来することとなった」と。「あんた、誰」と聞きましたら、その犬いわく「マルチーズ」
 ですって。

( 平成30年1月1日 記 )